デジタルブックの縦型・横型レイアウトの選び方|読みやすさを左右する基礎知識

さまざまな読み方に配慮したデジタル資料のイメージイラスト

📋 この記事でわかること

デジタルブックの縦型(ポートレート)と横型(ランドスケープ)は、読みやすさと閲覧端末との相性が大きく異なります。本記事では、両者の基本的な違いと特徴を整理したうえで、読みやすさを左右する「端末適性」「情報量と視線の流れ」「操作感」という3つの視点をわかりやすく解説します。さらに、カタログ・マニュアル・広報誌など資料の種類ごとに向いている向きを比較表で示し、「既存の紙資料の向きをそのまま踏襲してよいのか」という現場で最も迷いやすい論点についても、判断基準を提示します。担当者の方が制作を依頼する前に、失敗しない向き選びの基準を持ち帰っていただける内容です。

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紙のパンフレットやカタログをデジタルブックに変換するとき、意外と後回しにされがちなのが「縦型にするか、横型にするか」という判断です。しかし、この向きの選択は完成後の読みやすさを大きく左右し、あとから変更するには作り直しに近い手戻りが発生します。「なんとなく元の資料が縦だったから縦にした」という決め方では、スマートフォンで読みにくくなったり、余白が間延びして見えたりと、せっかくの電子化効果を損なうことも少なくありません。

この記事では、印刷とWebの両方を見てきた立場から、縦型・横型それぞれの特性と、読者の閲覧環境に合わせた選び方の基準を実務目線で整理します。制作を外部に依頼する前でも、社内で仕様を決める段階でも、判断に迷わないための土台としてお使いください。

目次

縦型・横型レイアウトとは?まず押さえる基礎

デジタルブックの「向き」とは、1ページの縦横比のことを指します。ページが縦長なら縦型、横長なら横型です。紙の資料でいえば、A4を縦に使うか横に使うかの違いと考えるとイメージしやすいでしょう。まずは両者の基本的な特徴を押さえておきます。

縦型(ポートレート)レイアウトの特徴

縦型は、ページの高さが幅よりも大きい、いわゆる「縦長」の形です。書籍・雑誌・報告書・提案書など、私たちが日常的に目にする文書の多くがこの形をとっています。文章を上から下へ読み進める日本語・欧文の自然な流れと相性がよく、1行あたりの文字数が適度に収まるため、長い本文を読ませる資料に向いています。

また、縦型はスマートフォンとの相性が抜群です。スマホは基本的に縦に持って使うため、縦型のデジタルブックなら画面いっぱいに1ページを表示でき、拡大しなくても文字が読めるケースが多くなります。閲覧者の多くがスマホからアクセスする広報誌や採用パンフレットでは、縦型が第一候補になります。

横型(ランドスケープ)レイアウトの特徴

横型は、ページの幅が高さよりも大きい「横長」の形です。プレゼンテーション資料(スライド)、製品カタログ、写真集、地図や図面を多用する資料などでよく使われます。横方向に広い誌面は、写真や図版を大きく見せたり、複数の要素を横並びで比較させたりする表現に向いています。

横型の最大の利点は、PC画面やタブレットを横向きにしたときに、画面の縦横比とぴったり合うことです。会議室のプロジェクターや大型ディスプレイに投影する前提の資料なら、横型のほうが余白なくフルスクリーンで見せられます。一方で、縦持ちのスマホでは1ページが小さく表示され、文字を読むのに拡大操作が必要になりやすい点は弱点です。

「向き」と「見開き表示」の関係

向きを考えるうえで、見開き表示との関係も理解しておくと判断がぶれません。見開き表示とは、紙の本を開いたように左右2ページを並べて見せる表示方法です。PCの大きな画面では見開きで表示し、スマホでは1ページずつ表示する、といった端末ごとの出し分けを行うツールが一般的です。

縦型ページを見開きで2枚並べると、全体としては横長の表示領域になります。つまり縦型でも、PCでは左右2ページを並べて雑誌のように見せられるわけです。逆に横型ページは1枚でも横長のため、単ページ表示でもPC画面によく馴染みます。「縦型=スマホ向き、横型=PC向き」という単純化はおおむね正しいものの、見開き表示を挟むと見え方が変わる点は覚えておきましょう。

読みやすさを左右する3つの視点

向きを選ぶときは、見た目の好みではなく「誰が、どの端末で、何のために読むか」から逆算するのが鉄則です。読みやすさを決める要素を、3つの視点に分けて整理します。

視点1:閲覧端末との相性

最も影響が大きいのが、読者が使う端末です。端末の画面は縦横比が決まっているため、ページの向きが画面に合っていないと、上下または左右に余白(レターボックス)が生まれ、実際の表示面積が小さくなります。表示が小さくなれば文字も小さくなり、読者は拡大・スクロール操作を強いられます。この一手間が、離脱の原因になります。

スマホは縦持ちが基本なので縦型と相性がよく、PCやプロジェクターは横長なので横型と相性がよい――この対応関係が出発点です。近年はレスポンシブに近い形で端末ごとに表示を最適化するビューアも増えていますが、ページそのものの向きが端末と大きくずれていると、最適化にも限界があります。

視点2:情報量と視線の流れ

2つ目は、1ページに載せる情報量と、読者の視線がどう動くかです。縦型は縦方向に長いため、見出し・本文・図版を上から順に積み上げる構成に向きます。読者の視線は自然に上から下へ流れ、ストーリーを追わせたい提案書や読み物系の資料で力を発揮します。

横型は横方向に広いため、左右の比較や、大きな1枚の図版を主役にする構成に向きます。「ビフォー・アフター」「他社比較」「工程の流れ」といった横並びの表現は、横型のほうが一目で把握させやすくなります。日本語を縦書きで組む冊子の場合は、視線が右から左へ流れるため、右開き・縦型の設計が読者の感覚に合います。

なお、本文と図版のどちらが主役かは、1冊の資料の中で必ずしも統一されているとは限らない点にも注意が必要です。前半は会社の理念や沿革を文章でじっくり語り、後半は製品写真や施工事例を大きく見せる、といった構成では、ページごとに最適な向きが割れてしまうことがあります。その場合でも、資料全体でどちらの要素が読者の意思決定を左右するのかを基準に、主となる向きを一つに定めるのが実務的です。向きがページごとに混在すると、読者は端末を持ち替える手間を強いられ、読む流れが途切れてしまいます。判断に迷ったら「最後まで読ませたい本文」の側に向きを合わせておくと、大きな失敗は避けられます。

視点3:スクロールとページめくりの操作感

3つ目は、読者が手を動かす操作の感触です。デジタルブックには、ページを1枚ずつめくる「ページ送り型」と、縦にスクロールして読み進める「スクロール型」があります。縦型ページはスマホの縦スクロールと動作の向きが一致するため、指の動きに素直で、直感的に読み進められます。

横型ページをスマホの縦スクロールで読ませると、1ページを見るのに横方向の拡大が必要になり、拡大とスクロールを交互に行う不自然な操作になりがちです。読者の操作ストレスは、そのまま読了率に跳ね返ります。向きを決めるときは、完成した資料を読者がどんな指の動きで読むのかを、頭の中で一度シミュレーションしてみることをおすすめします。

資料の種類別・向きの選び方

ここまでの3視点を踏まえ、資料の種類ごとにどちらの向きが向いているかを整理します。あくまで一般的な目安であり、実際には読者層と配布シーンで最終判断してください。

縦型が向く資料・横型が向く資料

向き 向いている資料 主な理由
縦型 会社案内・広報誌・採用パンフ・提案書・報告書・社内報 本文が多くスマホ閲覧が中心。読み物として上から読ませたい
横型 製品カタログ・営業スライド・写真集・図面/地図・料金比較表 図版や写真を大きく見せたい。PC/プロジェクター投影が中心
どちらも可 総合カタログ・マニュアル・記念誌 読者層が幅広い。主要な閲覧端末と元データの向きで決める

たとえば、ある製造業の中小企業では、取引先の技術者がPCで見る想定の詳細スペックカタログを横型で作り、一般消費者向けの会社案内を縦型で作る、という使い分けをしていました。同じ会社の資料でも、読者と閲覧端末が違えば最適な向きは変わる、という好例です。

迷ったときの判断フロー

向きに迷ったら、次の順番で自問すると答えが出やすくなります。

  1. この資料を読む人の7割以上はどの端末で見るか(スマホ中心なら縦型が有力)。
  2. 本文と図版・写真のどちらが主役か(本文中心なら縦型、ビジュアル中心なら横型)。
  3. 会議やプレゼンで投影する場面があるか(あるなら横型が有利)。
  4. 元になる紙資料はすでにどちらの向きか(作り直しコストと相談)。

4つのうち上から順に重みが大きいと考えてください。特に「主要な閲覧端末」は最優先です。読者の大半がスマホで見るのに横型で作ってしまうと、いくら中身がよくても読まれません。

既存の紙資料の向きは踏襲すべきか

現場で最も多い相談が、「今ある紙のパンフレットと同じ向きで電子化すればいいのか」という質問です。結論からいうと、紙で最適だった向きが、デジタルでも最適とは限りません。ここを丁寧に判断できるかどうかで、完成後の使い勝手が変わります。

紙とデジタルで最適な向きは変わる理由

紙の資料は、読者が手に取って自由に持ち替えられます。A4横のカタログでも、読者が両手で広げて見れば問題なく読めます。ところがデジタルブックは、読者が固定された画面の中で見るため、端末の向きと縦横比に縛られます。手元のスマホを横にして読んでくれる読者は多くありません。

そのため、紙では見栄えのよかった横型カタログが、スマホ画面では文字が小さすぎて読めない、というギャップが生まれます。紙の設計思想をそのまま持ち込むのではなく、「この資料はデジタルでは主にどの端末で読まれるのか」を起点に、向きを再検討する必要があるのです。

A4縦資料をそのまま電子化するときの注意点

比較的トラブルが少ないのは、A4縦の資料を縦型のデジタルブックにするパターンです。向き自体はスマホと相性がよいものの、注意点があります。A4縦はスマホ画面よりやや縦長のため、1ページ全体を表示すると左右にわずかな余白が出て、文字が小さくなることがあります。本文の文字サイズが小さい資料では、1行あたりの文字数を意識した行長設計を見直すと、スマホでの可読性が上がります。

元のPDFの解像度が低いと、拡大したときに文字や図がぼやける点にも注意が必要です。電子化の前に、できるだけ高解像度の元データを用意しておくと、拡大表示にも耐えられる仕上がりになります。

作り直すべきケースと踏襲でよいケース

向きを含めてレイアウトを作り直すべきか、そのまま踏襲してよいかは、次の目安で判断できます。

状況 おすすめの対応
紙も縦型で、閲覧もスマホ中心 向きは踏襲でOK。文字サイズと解像度のみ確認
紙が横型で、閲覧はスマホ中心 縦型への再構成を検討。少なくともスマホ表示を必ず確認
紙が横型で、閲覧もPC/投影中心 向きは踏襲でOK。見開き表示の有無を検討
読者層が読めず端末が定まらない 縦型を基本に、まず小さく作って反応を見る

作り直しには当然コストと時間がかかります。すべてを理想形にしようとせず、「読者の大半が使う端末で確実に読めること」を最低ラインとして、費用対効果で判断するのが現実的です。予算や納期に制約がある場合は、まずアクセスの多い主力資料から向きを最適化し、閲覧頻度の低い資料は現状の向きのまま電子化する、という優先順位づけも有効です。すべてを一度に完璧にする必要はなく、効果の大きいところから段階的に整えていくほうが、社内の合意も得やすくなります。

端末別の見え方と最適化のポイント

向きが決まったら、実際に主要な端末でどう見えるかを想定しておきます。ここを飛ばすと、公開後に「思ったより読みにくい」という声が上がりがちです。

スマートフォンでの表示

スマホは縦持ちが前提で、画面が小さいぶん、向きのミスマッチが最も表面化する端末です。縦型なら1ページを画面いっぱいに表示しやすく、拡大なしで読める確率が高まります。横型の場合でも、多くのデジタルブックツールはスマホでは1ページずつ表示に切り替えますが、それでも横長ページは縮小されるため、本文が小さくなりがちです。

対策としては、スマホ閲覧が多い資料は縦型を選ぶこと、横型を使う場合は本文の文字を大きめに組むことが基本です。公開前に、必ず自分のスマホで全ページを確認し、拡大しないと読めない箇所がないかをチェックしてください。

実際にあった例を挙げると、ある人材サービス会社がA4横のサービス紹介資料をそのまま横型で電子化したところ、応募者の約8割がスマートフォンからアクセスしていたにもかかわらず、初回表示では本文がほとんど読めない状態になっていました。縦型に作り直したうえで、1ページあたりの文字量を2割ほど減らして余白を確保したところ、平均閲覧ページ数が目に見えて伸びたといいます。端末の実態とページの向きが噛み合っているかどうかは、印象論ではなく閲覧データにもはっきり表れる要素です。加えて、スマホでは通信環境によってページの読み込みに時間がかかることもあるため、1ページの画像を必要以上に高精細にしすぎず、読みやすさと表示速度のバランスを取ることも、スマホ中心の資料では意識しておきたいポイントです。

タブレットでの表示

タブレットは、縦持ち・横持ちのどちらでも使われる中間的な端末です。画面がスマホより大きいため、縦型・横型のどちらもある程度きれいに表示できます。カタログや写真集のように、じっくり見せたいビジュアル資料は、タブレットの横持ちで見開き表示にすると、紙の冊子に近い満足感が得られます。

ただし、読者がどちらの向きで持つかは予測しづらいため、縦横どちらで持たれても破綻しないよう、要素を詰め込みすぎないレイアウトにしておくと安心です。

PC・大型ディスプレイでの表示

PCやプロジェクターは横長の画面が基本で、横型資料や、縦型の見開き表示が映えます。営業がオンライン商談で画面共有しながら見せる資料、会議で投影する資料は、PC表示を主戦場と考えて横型を選ぶと、余白なくフルに使えます。

一方、PCで縦型の単ページを表示すると、上下いっぱいに表示される代わりに左右へ大きな余白が出ます。これを避けたい場合は、縦型でも見開き表示に対応したツールを選び、左右2ページを並べて横長の表示領域を埋める設計にするとよいでしょう。

縦型・横型の選択でありがちな失敗と回避策

向き選びは、いくつかの典型的なつまずき方があります。あらかじめ知っておくだけで、多くの手戻りを防げます。現場でよく見かける失敗パターンを3つ取り上げ、それぞれの回避策を整理します。

失敗1:「元が横だから横」で機械的に決めてしまう

最も多いのが、元の紙資料の向きを深く考えずにそのまま引き継いでしまうケースです。紙で横型だったカタログを、閲覧者の大半がスマホであることを確認しないまま横型で電子化し、公開後に「文字が読めない」という声が寄せられる、という失敗は珍しくありません。回避策はシンプルで、制作に入る前に必ず「この資料は主にどの端末で読まれるのか」を一度立ち止まって確認することです。前例踏襲ではなく、読者起点で向きを決め直す習慣をつけましょう。既存資料の向きは、あくまで判断材料の一つに過ぎません。

失敗2:情報を詰め込みすぎて文字が小さくなる

2つ目は、1ページにあれもこれもと要素を盛り込み、結果として文字や図が小さくなってしまうパターンです。紙は近づけて見られますが、デジタルブックは端末の画面サイズに表示が縛られます。特にスマホでは、詰め込んだ情報がそのまま縮小されて表示され、読者は拡大操作を強いられます。回避策は、1ページあたりの情報量を意識的に絞り、余白を恐れないことです。ページ数が増えても、1ページが読みやすいほうが結果的に最後まで読まれます。「1画面で無理なく読める情報量か」を、向きと合わせて必ず確認してください。

失敗3:PC画面だけで確認して公開してしまう

3つ目は、制作担当者が自分のPCで見て「問題ない」と判断し、そのまま公開してしまうケースです。作り手はPCの大きな画面で作業するため、スマホでの見え方を見落としがちです。実際にはスマホで読む読者のほうが多いのに、PC基準で仕上げてしまうと、最も多い読者層にとって読みにくい資料になってしまいます。回避策は、公開前に必ず実機のスマホで全ページを確認することです。可能であれば、複数人の端末で見てもらうと、機種による差異にも気づけます。この一手間が、公開後のクレームや作り直しを未然に防いでくれます。

向きを決めるときの実務チェックリスト

最後に、担当者の方が制作の仕様を固める前に確認しておきたいポイントを、チェックリストにまとめます。制作会社への依頼書やツール選定の際に、そのまま使える観点です。

公開前に確認したい項目

  1. 読者の主要な閲覧端末(スマホ/タブレット/PC)を想定できているか。
  2. 本文中心かビジュアル中心かで、向きの方向性が定まっているか。
  3. 会議投影・オンライン商談など投影シーンの有無を確認したか。
  4. 元データの解像度は拡大表示に耐えられるか。
  5. 選ぶツールが端末ごとの表示最適化や見開き表示に対応しているか。
  6. スマホ実機で全ページを確認し、拡大せず読める状態か。

フィックス型とリフロー型の違いも押さえる

向きと合わせて理解しておきたいのが、レイアウトの保持方式です。デザインをそのまま固定して表示するフィックス型は、カタログやパンフレットのように見た目を崩したくない資料に向きます。向きの概念が明確なのも、このフィックス型です。一方、画面幅に応じて文字が流し込まれるリフロー型は、小説やテキスト中心の資料に向き、端末の向きに柔軟に追従します。多くのB2B資料は見た目の維持が重要なため、フィックス型で向きをしっかり設計するケースが中心になります。

迷ったら両方を小さくテストする

どうしても向きを決めきれないときは、代表的な数ページだけを縦型・横型それぞれで試作し、主要な端末で見比べるのが最も確実です。頭で考えるより、実機で見たほうが判断は一瞬でつきます。読みやすさは最終的に読者が決めるものなので、社内の複数のメンバーにスマホ・PCの両方で見てもらい、率直な感想を集めると、思わぬ見落としに気づけます。アクセシビリティの観点から、文字サイズを変えたい高齢の読者がいる場合も、実機テストで確認しておくと安心です。

よくある質問(FAQ)

縦型と横型は、あとから変更できますか?

向きの変更は、実質的にレイアウトの作り直しに近い作業になります。ページ内の要素配置や文字組みが向きに合わせて設計されているため、単純に回転させるだけでは崩れてしまうからです。手戻りを避けるためにも、制作に入る前の企画段階で向きを確定させておくことを強くおすすめします。

1つのデジタルブックの中で縦型と横型を混在させてもよいですか?

技術的には可能な場合もありますが、原則としておすすめしません。ページごとに向きが変わると、読者は端末を持ち替えたり画面を回転させたりする手間が生じ、読む流れが途切れてしまいます。どうしても横長の図版を入れたい場合は、縦型ページの中に収めるか、そのページだけ拡大表示できるようにする方法を検討してください。

読者がスマホとPCの両方で見る場合は、どちらの向きが正解ですか?

まず「どちらの端末で読む人が多いか」を優先して決めます。判断がつかない場合は、より画面が小さく制約の大きいスマホを基準に縦型を選ぶのが無難です。縦型なら、PCでも見開き表示に対応したツールを使えば横長の画面をきれいに埋められるため、両立させやすい選択肢になります。

既存のA4横のカタログは、そのまま横型で電子化すべきですか?

閲覧が主にPCや商談での画面共有なら、横型のまま踏襲して問題ありません。逆に、読者の多くがスマホで見る想定なら、横型のままだと文字が小さく読みにくくなるため、縦型への再構成を検討する価値があります。まずは想定される主要な閲覧端末を確認してから判断してください。

縦書きの冊子はどちらの向きにすべきですか?

縦書きの日本語は視線が上から下・右から左へ流れるため、縦型ページで右開きに設計するのが自然です。社史や記念誌、伝統的な会報などで縦書きを用いる場合は、縦型を基本にすると読者の感覚に合います。横書きと縦書きが混在する資料では、全体の主となる本文の組み方に向きを合わせるとまとまります。

向きを決める前に、必ずやっておくべきことはありますか?

読者がどの端末で・どんな場面で読むかを具体的に想定することです。可能であれば、代表的な数ページだけを縦型・横型の両方で試作し、実際のスマホやPCで見比べてみてください。実機で確認すると、頭で考えていたときには気づかなかった読みにくさが一目でわかり、判断の精度が大きく上がります。

✏️ 桐生 優吾より

印刷業界にいた頃、私たちは「向き」をほとんど意識せずに仕事をしていました。A4縦の会社案内も、A4横のカタログも、読者が手に取って自由に持ち替えて読んでくれる前提だったからです。ところが、その資料をデジタルブックにした瞬間、状況は一変します。読者は手のひらの中の固定された画面で読むようになり、「向き」が読みやすさを決める最初のスイッチになるのです。ここに気づかないまま、紙の向きをそのまま持ち込んで「なんだか読みにくい」と悩むケースを、私はこれまで数え切れないほど見てきました。

向き選びの答えは、突き詰めれば一つに集約されます。「読者は誰で、どの端末で読むのか」。この問いにきちんと答えられれば、縦型か横型かはおのずと決まります。逆に、この問いを飛ばして見た目の好みや前例で決めてしまうと、どれだけ中身が良くても読者に届きません。デジタル化の目的は「見栄えを良くすること」ではなく「相手にきちんと読んでもらうこと」だと、私はいつも自分に言い聞かせています。

実は、忘れられない失敗があります。独立して間もない頃、私はある会社の周年記念誌を、元の紙が横型だからという理由だけで、深く考えずに横型のまま電子化しました。見た目には立派に仕上がって満足していたのですが、公開後に届いたのは「スマホだと字が小さくて読めない」という声ばかり。社員のご家族や取引先の多くが、通勤中や休憩中にスマートフォンで開いていたのです。結局その記念誌は縦型に作り直すことになり、余計な時間と費用を発注元にかけさせてしまいました。あのとき「誰が、どの端末で読むのか」をたった一度確認していれば防げた失敗です。この一件があったからこそ、私はどんな案件でも、この問いを何よりも先に立てるようになりました。

とはいえ、頭で完璧に設計しようとする必要はありません。迷ったら、数ページだけ縦と横の両方で作って、自分のスマホとPCで見比べてみてください。ほんの5分の試作が、公開後の後悔をなくしてくれます。読みやすさは理屈ではなく、最後は読者の目が決めるものです。まずは手持ちの資料を1点、無料サンプルとしてデジタルブック化して、縦と横の見え方を実際に体感してみることから始めてみませんか。もし判断に迷ったら、遠慮なく私たちのような制作の現場に相談してください。第三者の目線が一つ入るだけで、向きの答えは驚くほどあっさり見えてくるものです。その一歩が、伝わる資料づくりの確かな出発点になります。

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この記事を書いた人

株式会社アニ通の事業部長として、印刷・Web 領域で10年以上のキャリアを積んできました。前職では商業印刷会社で営業と制作ディレクションに従事し、紙媒体の企画から入稿、校正、納品までの一連の工程を現場で経験しています。その後 Web 制作と SaaS 導入支援へ領域を広げ、紙とデジタルの双方を内側から見てきたことが、現在の編集方針の土台になっています。デジタルブックPDF メディアでは創設者として編集統括を担当し、企画立案・取材方針の設計・専門家監修の調整・品質管理まで、記事が読者の手元に届くまでの全工程に責任を持っています。

このメディアを立ち上げた問題意識は明確です。中小企業のペーパーレス化やデジタルブック導入の現場では、ツールの機能比較やコスト試算だけでは語りきれない「移行のつまずき」が必ず起こります。社内の合意形成、既存業務フローとの整合、印刷会社との関係、電子帳簿保存法をはじめとする法令対応——こうした実務の壁を、業界の内側を知る立場と導入企業の担当者目線の両方から言語化することを大切にしています。

編集で徹底しているのは「担当者がそのまま社内説明に使えるか」という基準です。専門用語を並べた解説ではなく、なぜその選択になるのか、判断の根拠と順序が伝わる構成を心がけています。法務・会計・セキュリティなど専門領域については外部の有資格者へ監修を依頼し、編集部の推測で断定しない体制を取っています。紙からデジタルへの移行は単なるツール置き換えではなく業務そのものの設計変更です。その意思決定に伴走できる信頼できる情報源であり続けること。それがデジタルブックPDF 編集部の役割だと考えています。

読者の多くは、専任の IT 担当者がいないなかでデジタル化の旗振りを任された、総務や情報システムを兼任する担当者の方々です。だからこそ記事では、専門家にしか導き出せない最適解よりも、限られた人員と予算のなかで「次の一歩をどう踏み出すか」を優先して示すようにしています。私自身、現場で理屈は分かっても社内が動かないもどかしさを何度も経験してきました。導入して終わりではなく、運用が定着し、紙の業務と無理なく共存できる状態に至るまでを見据えた実務情報を、編集部の責任として継続的に届けていきます。

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