📋 この記事でわかること
デジタルブック制作の全体像を、発注を検討している担当者の目線で1本にまとめました。まず「PDFをそのままサイトに置く」場合と何が変わるのかを整理し、無料ツールでの内製・有料サービスでの内製・制作代行への外注という3つの選択肢を、向き不向きの比較表で判断できるようにしています。企画から公開・運用までの6ステップと、各工程で担当者が用意すべき素材・確認事項も具体的に示しました。さらに費用が決まる変数、依頼先の選び方、実際の制作事例、発注前後のチェックリストまでたどれるので、社内の稟議資料や見積もり依頼の準備にそのまま流用できます。読み終えたときに「自社はどの方法で、どれくらいの予算感で、誰に頼むべきか」の当たりがついている状態をゴールにしています。
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デジタルブック制作とは?紙・PDFからの進化で理解する
デジタルブック制作とは、カタログ・会社案内・広報誌・マニュアル・議事資料といった「もともと紙で配っていた冊子」を、ブラウザ上でページをめくりながら読める形に作り替える一連の作業のことです。ファイルを変換するだけの単純作業だと思われがちですが、実際には目的の整理、原稿と素材の準備、入稿用のPDFの作成、閲覧機能の組み込み、公開後の運用までを含んだ工程全体を指します。この記事では、その全体像を発注側の視点で順にたどっていきます。
「PDFを置く」ことと何が違うのか
デジタルブックは、冊子のレイアウトをそのまま保ったまま、Webブラウザ上で見開き表示・ページめくり・目次ジャンプ・全文検索といった操作ができる電子カタログの形式です。サイトにPDFファイルを1本アップロードして「ダウンロードはこちら」とリンクを張る方法とは、読者の体験がまったく違います。
PDFリンク方式では、読者はまずファイルをダウンロードし、閲覧ソフトで開き、拡大縮小を繰り返しながら読むことになります。スマートフォンでは文字が小さく、途中で離脱されやすいのが実情です。一方でデジタルブックは、リンクをタップした瞬間にブラウザ内で表紙が開き、指でめくって読み進められます。さらに、どのページが何回開かれたか、どこで読むのをやめたかといった行動データを取得できる点が、ファイルを配布するだけの方式との決定的な差です。
もうひとつ大きいのが、更新のしやすさです。PDFを直接リンクしていると、差し替えのたびにファイル名やキャッシュの扱いに気を使う必要がありますが、デジタルブックは同じURLのまま中身だけを入れ替えられる仕組みが一般的です。営業資料のように改訂が頻繁に発生する冊子ほど、この差が運用コストとして効いてきます。
紙 → PDF → デジタルブックという3段階
企業の資料が電子化されていく流れは、おおむね3段階に整理できます。第1段階は紙の印刷物のみ。第2段階は印刷用データからPDFを書き出し、メール添付やサイト掲載で配るペーパーレスの入口。そして第3段階が、閲覧環境そのものをWeb上に用意するデジタルブックです。
多くの企業は第2段階で止まっています。印刷費と在庫は減ったものの、「配ったあと誰がどこまで読んだか分からない」「郵送コストは減ったが商談の材料は増えていない」という状態です。第3段階に進むと、資料は配布物から計測可能なWebコンテンツに変わります。DXという言葉を掲げた施策のなかでも、既存の冊子を起点にできるデジタルブック制作は着手のハードルが低く、効果が数字で見えるため、ペーパーレスDXの第一歩として選ばれやすい領域です。
電子書籍・EPUBとの違いを整理する
「それは電子書籍と何が違うのか」という質問は、社内説明の場でほぼ必ず出ます。区別のポイントはレイアウトの扱いです。
小説やビジネス書のようなeBookは、画面サイズに応じて文字が流し込み直されるリフロー型が主流で、フォーマットとしてはEPUBが使われます。読みやすさは高い反面、デザイナーが組んだ誌面の見た目は保たれません。対してデジタルブックはフィックス型、つまり誌面のレイアウトを固定したまま表示します。写真と文字の位置関係、図版の並び、カタログの価格表といった「デザインが情報の一部になっている冊子」では、フィックス型でなければ意味が伝わりません。
したがって、読み物として文章を届けたいならリフロー型の電子書籍、誌面ごと届けたいならデジタルブック制作、という切り分けになります。企業のカタログ・会社案内・広報誌はほぼ後者に該当します。
デジタルブック制作でできること(機能の全体像)
発注前に押さえておきたいのが、「何ができるのか」の全体像です。できることを知らないまま見積もりを取ると、本来は入れられた機能を落としたまま公開してしまい、あとから作り直しになります。ここでは大きく4つに分けて整理します。
閲覧体験:ページめくり・目次・全文検索
基本機能は、紙の冊子を読む動作をブラウザ上で再現する部分です。見開き表示、ページめくりのアニメーション、サムネイル一覧、目次からの直接ジャンプ、しおり、拡大表示などが含まれます。現在の主流はHTML5ベースで、専用のプラグインを入れずにPCでもスマートフォンでも動作します。
意外と効くのが全文検索です。数十ページのカタログから型番を探すとき、紙なら索引を引く必要がありますが、デジタルブックなら検索窓に打ち込むだけで該当ページに飛べます。問い合わせ対応の時間短縮という点で、社内の業務効率化にも直結する機能です。スマートフォン閲覧の比率が高い場合は、画面幅に応じて表示を切り替えるレスポンシブ対応も要件に入れておきます。
動的コンテンツ:リンク・動画・フォームの埋め込み
紙ではできなかったことを足せるのが、デジタルブック制作の面白いところです。代表的なのは次の3つです。
- 外部リンク:商品ページ、資料請求フォーム、採用エントリーへ誌面から直接遷移させる
- 動画埋め込み:施工事例や製品の動作を、該当ページ上で再生できるようにする
- 問い合わせ導線:ページ内にボタンを置き、読んだ直後の温度が高いタイミングで行動につなげる
ここで重要なのは、リンクを「貼れる」ことではなく「どこに貼るか」です。会社案内なら採用ページ、カタログなら型番ごとの製品ページというように、誌面の文脈と接続先が一致していないとクリックされません。制作の企画段階でリンク設計を決めておくと、公開後の効果が変わります。
アクセス解析:どのページが読まれたかが分かる
配布して終わりだった資料が、公開後も数字を返してくれるようになります。取得できる代表的な指標は、閲覧数を示すPV、実際の閲覧者数に近いUU、最初のページだけで帰ってしまった割合の直帰率、どのページで読むのをやめたかを示す離脱率などです。サービスによっては、ページ内のどこがクリックされたかを可視化するヒートマップも利用できます。
この数字は、次の号の企画に直接使えます。「特集ページの離脱率が高い」なら構成を見直す、「価格表の閲覧が突出している」なら前方に移動する、といった改善が根拠を持って進められるようになります。紙の冊子では絶対に得られなかった情報です。
セキュリティ:社外に出せない資料も扱える
代理店向けの価格表、社内マニュアル、株主向け資料など、公開範囲を絞りたい冊子もあります。この場合は閲覧制限の機能が必要です。通信の暗号化を担うSSLは前提として、閲覧に合言葉を求めるパスワード保護、社内ネットワークからのみ閲覧を許可するIP制限、印刷やダウンロードの禁止、公開期限の設定といった機能を組み合わせます。
要件定義の段階で「誰に見せて、誰に見せないか」を明文化しておくことが大切です。ここが曖昧なまま進むと、公開直前に「やはり社外秘だった」と判明して差し戻しになります。
デジタルブック制作の3つの方法と向き不向き
デジタルブック制作の進め方は、大きく3つに分かれます。どれが正解というものではなく、社内のリソース・更新頻度・求める品質のバランスで決まります。
方法1:無料ツールで内製する
無料または低価格のオンラインツールにPDFをアップロードすると、自動でページめくり形式に変換してくれるサービスがあります。費用がほぼかからず、その日のうちに形になるのが最大の利点です。
一方で、無料プランには制約が付きものです。ページ数や容量の上限、提供元のロゴ表示や広告、独自ドメインが使えない、解析機能が簡易的、サービス終了時にURLごと消えるといったリスクがあります。社外に長期公開する基幹資料には向きませんが、「まず社内で見せて反応を確かめたい」「一度きりのイベント配布物で十分」という用途なら合理的な選択です。
方法2:有料SaaSで内製する
月額または年額で利用するSaaS型のサービスを契約し、自社の担当者がPDFを入稿して運用する方法です。管理画面から複数の冊子を一覧管理でき、解析やセキュリティ機能も一通り備わっています。自社サイトのCMSに埋め込んで運用するケースも多くあります。
向いているのは、年に何冊も発行する、あるいは月次で差し替えが発生する組織です。1冊あたりの単価は外注より下がり、公開までのリードタイムも短くなります。反対に、年1回の会社案内だけという場合は、年額の固定費が割高になることがあります。また、入稿用PDFの品質管理や誌面のリンク設計は自社の作業として残るため、担当者の工数は必要です。
方法3:制作代行に外注する
企画・デザイン・PDF整備・変換・機能実装・公開設定までをまとめて依頼する方法です。元データが古いIllustratorファイルしかない、紙の冊子しか残っていない、動画やフォームを埋め込みたい、アクセシビリティに配慮した作りにしたい——このような条件が付くほど、外注の価値が上がります。
社内に印刷データの知識がない場合も外注が向きます。フォントの埋め込み漏れ、トンボや裁ち落としの処理、カラーモードの不一致といった落とし穴は、経験がないと公開直前まで気づけません。制作会社はこの部分を工程として持っているため、担当者は原稿と確認に集中できます。
3つの方法を比較表で整理する
| 比較項目 | 無料ツール内製 | 有料SaaS内製 | 制作代行に外注 |
|---|---|---|---|
| 初期費用 | ほぼ不要 | 小〜中(初期設定費) | 中〜大(冊子単位) |
| 担当者の工数 | 大 | 中 | 小(確認が中心) |
| デザイン品質 | 元PDF次第 | 元PDF次第 | 誌面から作り込める |
| 解析・セキュリティ | 簡易的または不可 | 標準搭載が多い | 要件に合わせて設計 |
| 更新のしやすさ | 自分で再アップ | 管理画面から即時 | 依頼ベース(契約次第) |
| 向いているケース | 試験導入・単発配布 | 発行点数が多い組織 | 対外的な主力資料 |
判断に迷ったら、「その冊子を何年使うか」「年に何回差し替えるか」「見せたくない相手がいるか」の3問に答えてみてください。長く使い、差し替えが少なく、対外的な顔になる冊子ほど外注の価値が高く、短命で点数が多い資料ほど内製が向きます。
デジタルブック制作の流れ6ステップ
ここからは実際の進行です。外注する場合も内製する場合も、工程そのものは大きく変わりません。それぞれのステップで「担当者が何を用意するか」を意識して読んでみてください。
STEP1:企画——目的・読者・成果指標を決める
最初にやるべきは、ツール選びではなく目的の確定です。展示会で配っていた紙のカタログを置き換えるのか、営業がその場でスマートフォンから見せるためなのか、採用候補者に事前に読んでもらうためなのかによって、必要な機能もページ構成も変わります。
あわせて、公開後に何を見て成否を判断するかも決めておきます。閲覧数だけを見るのか、問い合わせフォームへの遷移数を見るのか。ここを先に決めておくと、STEP4でどこに計測用のリンクを置くべきかが自動的に決まります。
STEP2〜3:原稿・素材の準備と入稿PDFの作成
実務で最も時間を食うのがこの工程です。既存の冊子がある場合は元データ(IllustratorやInDesignのファイル、あるいは印刷用PDF)を探すところから始まります。制作会社が変わっている、担当者が退職している、といった理由で元データが見つからないケースは珍しくありません。
入稿用PDFで確認すべき点は、フォントの埋め込み、画像解像度、ページ順序、余分なトンボの有無、そしてページ単位で正しく分割されているかどうかです。長期保存や公文書に近い性質の資料であれば、保存性に配慮したPDF/A形式の要否も検討対象になります。この工程の具体的な作業手順は、デジタルブック制作の依頼準備ガイド|原稿・素材・入稿PDFの作り方で工程ごとに解説しているので、実作業に入る前に目を通しておくと差し戻しが減ります。
STEP4〜5:変換・機能の組み込みと校正
PDFをデジタルブック形式に変換し、目次、リンク、動画、フォーム、アクセス制限といった機能を組み込みます。ここで初めて「読める形」になるので、社内のレビューはこの段階から本格化します。
校正で見るべきは、誤字脱字だけではありません。次の観点を必ずチェックしてください。
- すべてのリンクが意図した先に飛ぶか(リンク切れ・誤リンクの確認)
- スマートフォンとPCの両方で表示が崩れていないか
- 見開きの左右がずれていないか(表紙が単ページ扱いになっているか)
- 動画が回線の細い環境でも再生できるか
- パスワードやIP制限が意図どおりに効いているか
特に4番と5番は、公開後に指摘されると信用に関わります。校正日程には、機能確認のための1日を別枠で確保しておくのが安全です。
STEP6:公開と運用
公開時は、自社サイトのどこから導線を張るかを決めます。トップページのバナー、製品ページ内の埋め込み、メール署名、営業資料のQRコードなど、複数の入口を用意すると閲覧数が伸びます。
そして公開後は、解析データを見る習慣を作ることが本題です。月に一度、閲覧されたページの上位と離脱の多いページを確認し、次号の構成に反映する。この運用サイクルが回り始めると、デジタルブック制作は「作って終わりの発注」から「改善が続く資産」に変わります。
デジタルブック制作の費用相場をざっくり掴む
費用は条件で大きく変動するため、一律の定価はありません。ここでは見積もりを読むための「変数」を押さえておきましょう。
費用が決まる4つの変数
| 変数 | 費用への影響 | 担当者が事前に確認すること |
|---|---|---|
| ページ数 | ページ単価で積み上がる基本要素 | 表紙・裏表紙を含めた総ページ数 |
| 元データの状態 | 紙しかない場合はスキャン・再作成費が加算 | 元データの有無と形式 |
| 追加機能 | 動画・フォーム・多言語・制限機能ごとに加算 | 本当に必要な機能の優先順位 |
| 運用形態 | 買い切りか月額かでトータルが変わる | 何年使うか・年間の更新回数 |
見積もりを比較するときは、初期費用の金額だけを並べても意味がありません。「3年間使ったときの総額」で揃えると、月額型と買い切り型を同じ土俵で比べられます。金額の内訳や、費用を抑えるための具体的な交渉ポイントはデジタルブック制作の費用相場|外注料金の内訳と安く抑える5つのコツで詳しく分解しているので、予算取りの前に確認してください。
削ってよいコストと削ってはいけないコスト
コスト圧縮の相談を受けたとき、私たちがまず提案するのは「機能の優先順位づけ」です。初回公開では基本機能に絞り、動画や多言語は反応を見てから追加する。この段取りにするだけで初期費用は下がり、しかも無駄打ちが減ります。
逆に削らないほうがよいのが、校正工程と入稿PDFの整備費です。ここを圧縮すると、公開後の修正回数が増えて結局トータルが膨らみます。目に見えない工程ほど、後から効いてきます。
補助金という選択肢
社内の業務システムと連携させる、あるいは資料配布の仕組みそのものを刷新するといった規模になる場合、IT導入補助金やものづくり補助金の対象になる可能性があります。制度の要件や公募スケジュールは年度ごとに変わるため、検討する場合は必ず最新の公募要領を確認し、対象となるかどうかを支援機関に相談してください。補助金ありきで計画を組むのではなく、あくまで使えれば助かる選択肢として扱うのが安全です。
デジタルブック制作の依頼先の選び方
外注を選んだ場合、次の課題は「どこに頼むか」です。同じデジタルブック制作という言葉を使っていても、会社によって得意分野はかなり違います。
依頼先の3タイプ
- デジタルブック専業のサービス提供会社:自社プラットフォームを持ち、変換・配信・解析まで一貫。運用のしやすさと安定性に強い
- 印刷会社・デザイン会社:紙の制作と同時に電子版も作れる。誌面デザインから相談したい場合に有力
- Web制作会社:自社サイトへの組み込みや、フォーム・解析ツールとの連携を含めて設計できる
紙とWebの両方を同時に刷新したいなら印刷会社やデザイン会社、既存サイトの一機能として組み込みたいならWeb制作会社、点数が多く運用重視ならサービス提供会社、というのが大まかな目安になります。
比較で外してはいけない観点
相見積もりを取るときは、金額以外に次の点を必ず揃えて質問してください。
- 実績(自社と近い業種・近いページ数の制作事例があるか)
- 対応範囲(デザインから頼めるのか、PDF入稿が前提なのか)
- 修正の扱い(何回まで無償か、公開後の軽微な差し替えは含まれるか)
- 納期(何営業日か、繁忙期の遅延リスクをどう伝えているか)
- 公開後のサポート(障害時の連絡窓口と対応時間)
- データの所有権(契約終了後にファイルとURLがどうなるか)
- セキュリティ対応(制限機能の実装可否と、預けたデータの管理体制)
特に6番のデータの所有権は見落とされがちです。契約が終わった瞬間に閲覧できなくなる仕様なのか、成果物を引き取れるのかで、数年後の選択肢がまったく変わります。それぞれの観点をどう質問し、回答をどう評価するかはデジタルブック制作会社の選び方|比較7ポイントと見積もり依頼の実務に実務手順としてまとめています。
見積もり依頼のときに伝えるべき情報
精度の高い見積もりを早くもらうコツは、こちらから条件を出し切ることです。最低限、次の6点を書いて送れば、往復の回数が目に見えて減ります。
- 冊子の名称・用途・想定読者
- 総ページ数(表紙を含む)とサイズ
- 元データの有無と形式(Illustrator/InDesign/PDF/紙のみ)
- 希望する機能(リンク・動画・検索・アクセス制限など)
- 公開希望日と、社内承認に必要な期間
- 予算の上限(レンジでよい)
予算を伝えると足元を見られる、と考える担当者もいますが、実際には逆です。レンジが分かれば提案側は機能の取捨選択ができ、予算内で最大の効果を出す構成を出してきます。伝えないほうが、噛み合わない見積もりが返ってきて時間を失います。
制作事例:イベント配布パンフレットをデジタルブック化する
抽象論だけでは掴みにくいので、実際の制作事例を1つ見ておきましょう。
紙のパンフレットが抱えていた課題
イベント会場で配る冊子は、当日その場にいた人にしか届きません。印刷部数を読み違えれば不足か余剰が発生し、来場できなかったファンには内容が届かない。さらに、紙である以上、当日に判明した変更点を反映することもできません。この構造的な課題を、配布物の電子化で解いたのがVTuberオフ会パンフレットのデジタルブック制作事例|イベント配布物を電子化する方法で紹介しているケースです。
BtoBの資料制作に応用できるポイント
この事例が示している要点は、業種を問わず応用が効きます。第一に、配布物をURL化すると「その場にいなかった人」にも届く点。展示会で名刺交換できなかった来場者に、後日メールでURLを送れば接点が続きます。第二に、印刷部数の読み違いという不確実性が消える点。第三に、公開後に内容を差し替えられる点です。
そして最も大きいのが、閲覧データが残ることです。どのページが読まれたかが分かれば、次回の構成をデータに基づいて決められます。イベント配布物でも製品カタログでも、この構造は同じです。
失敗しないためのチェックリスト
最後に、実際の現場で「これを確認しておけば防げた」というポイントをチェックリスト形式でまとめます。
発注前のチェック
- この冊子の目的と、公開後に見る指標を1行で書けるか
- 元データの所在を確認したか(無い場合の追加費用を見積もりに含めたか)
- 公開範囲(全公開/限定公開)を関係部署と合意したか
- 掲載する写真・イラスト・フォントの利用許諾はWeb公開まで及んでいるか
- 社内承認に必要な日数を逆算してスケジュールを引いたか
4番目の権利確認は特に注意が必要です。「印刷物での使用」に限定された素材をWebで公開すると、契約違反になります。過去の冊子を電子化するときは、必ず素材ごとに許諾範囲を洗い直してください。
公開前のチェック
- PC・スマートフォン・タブレットの実機で表示を確認したか
- すべてのリンクをクリックして遷移先を確認したか
- アクセス制限が意図どおりに動くか、制限側の環境からも試したか
- ページ順・見開きのずれがないか、通しで1回読んだか
- 公開URLと、サイト内の導線を関係者に共有したか
公開後の運用チェック
- 月次で解析データを確認する担当と日程を決めたか
- 内容差し替えの依頼フロー(誰に、何営業日前に)を決めたか
- 次号の企画に、今号のデータを反映する場を設けたか
公開して終わりにしないための仕組みを、公開前に決めておく。地味ですが、これができている組織とできていない組織で、1年後の成果は大きく差がつきます。デジタルブック制作をさらに具体的に詰めていく段階に入ったら、費用相場の記事で予算のレンジを固め、会社選びの記事で候補を絞り、依頼準備の記事で入稿物を揃える——この順番で読み進めると、発注までの判断材料が一通り揃います。
よくある質問(FAQ)
デジタルブック制作は何日くらいかかりますか?
入稿用PDFが整っていて機能もシンプルなら、変換と設定だけで数営業日というケースもあります。一方、デザインから起こす、動画やフォームを埋め込む、多言語対応するといった条件が加わると数週間規模になります。社内承認の往復期間も含めて逆算し、公開希望日から余裕を持ったスケジュールを引いてください。
元データがなく、紙の冊子しか残っていません。制作できますか?
可能です。冊子をスキャンして画像化し、そこからデジタルブックを組み立てます。ただし、文字が画像として扱われるため全文検索が使えない、解像度によっては細かい文字が読みにくいといった制約が出ます。長く使う主力資料であれば、この機会に誌面から作り直す判断も検討する価値があります。
スマートフォンでも問題なく読めますか?
現在のサービスはスマートフォン閲覧を前提に作られているため、基本的には問題ありません。ただしA4の見開きをそのまま小さな画面で表示すると文字が読みづらくなるため、単ページ表示への自動切り替えや拡大操作の挙動を、公開前に実機で必ず確認してください。想定読者の閲覧環境が偏っている場合は、要件として先に伝えておくと安心です。
社外に見せたくない資料でもデジタルブックにできますか?
できます。閲覧パスワードの設定、社内ネットワークからのみ許可するIP制限、印刷・ダウンロードの禁止、公開期限の設定などを組み合わせて公開範囲を絞ります。ただし利用できる制限機能はサービスによって差があるため、見積もり依頼の段階で「誰に見せて、誰に見せないか」を具体的に伝えて可否を確認してください。
内製と外注、どちらを選ぶべきか判断できません。
判断軸は「その冊子を何年使うか」「年に何回差し替えるか」「対外的な顔になる資料か」の3点です。長く使い、更新が少なく、社外の目に触れる主力資料なら外注の価値が高くなります。逆に短期間で入れ替わる資料や点数の多い社内文書は、内製のほうがスピードとコストの両面で合理的です。
公開後に内容を修正したくなったらどうなりますか?
多くのサービスでは、同じURLのまま中身だけを差し替えられます。内製の場合は管理画面から自分で入れ替え、外注の場合は契約内容によって無償対応か有償対応かが分かれます。ここは契約前に必ず確認すべき項目で、「何回まで」「何営業日で」「どこまでの範囲が含まれるか」を書面で残しておくとトラブルを避けられます。
紙のカタログを完全にやめてしまって問題ありませんか?
読者層によります。商談の場で手渡す紙にはデジタルにない説得力があり、業種によっては紙を求める顧客も残っています。現実的な進め方は、印刷部数を絞りつつ電子版を主軸にする併用です。電子版の閲覧データを見ながら紙の必要部数を判断していくと、無理のない移行ができます。
検索エンジンからの流入は見込めますか?
デジタルブック単体で検索流入を大きく伸ばすのは難しいのが実情です。テキストが画像化されている場合は特に不利になります。現実的には、自社サイトの紹介ページを用意してそこに検索対策を施し、デジタルブックは「詳しく見る」の受け皿として配置する構成が有効です。サービスによってはテキスト情報を検索エンジンに渡す仕組みを持つものもあります。
最初の1冊はどの資料から始めるのがおすすめですか?
元データが手元にあり、更新頻度が高く、社外に見せても支障のない資料が最適です。会社案内や製品カタログが典型で、効果も測りやすくなります。逆に、権利確認が必要な写真を大量に含む冊子や、法務チェックが重い資料を最初に選ぶと、工程が止まりやすく社内の推進力が落ちるので避けたほうが無難です。
✏️ 桐生 優吾より
デジタルブック制作の相談を受けるとき、最初にいただく質問はたいてい「いくらかかりますか」です。もちろん予算は重要なのですが、この質問だけで話を始めると、たいてい遠回りになります。というのも、金額を決めているのはページ数でも機能でもなく、その手前にある「何のために作るのか」だからです。展示会で名刺交換できなかった来場者に後から届けたいのか、営業がタブレットで見せるためなのか、採用候補者に事前に読んでもらいたいのか。目的が違えば、必要な機能も、リンクを置くべき場所も、公開後に見るべき数字も変わります。そして目的が固まっていれば、機能の取捨選択ができるので、結果的に費用は下がります。急がば回れ、というのが現場での実感です。
もうひとつお伝えしたいのは、「作ること」より「作ったあと」のほうが本番だということです。紙の冊子は配ってしまえば結果が見えませんでしたが、デジタルブックは公開した瞬間から数字を返し始めます。どのページで読者が止まったのか、価格表と事例のどちらが読まれているのか、スマートフォンとPCでどちらが多いのか。この情報は、次の号を作るときの材料としてこれ以上ないほど具体的です。それなのに、公開後に一度も管理画面を開いていないという話を、私は何度も聞いてきました。月に一度、15分でいいので数字を見る時間を決めておく。たったそれだけで、2号目・3号目の質が変わります。担当者の勘や社内の声だけで構成を決めていた頃と比べると、議論の進み方そのものが変わるはずです。「この特集は評判がよかった気がする」ではなく「このページは最後まで読まれている」と言えるようになると、上長の合意も驚くほど早く取れます。
最後に、これから検討される方への現実的な提案です。いきなり主力の会社案内をフルスペックで作ろうとせず、まずは1冊、小さく試してみてください。手元にPDFがある資料を1本、実際にデジタルブックの形にしてみると、社内の反応も、運用にかかる手間も、自社に足りていないものも、全部その場で分かります。机上で比較検討を続けるより、1冊動かしたほうが圧倒的に早いというのが、これまで多くの案件を見てきての結論です。当サイトを運営するデジタルブック制作代行サービスでも無料お試しをご用意していますので、手持ちの資料でまず1冊、実物を触ってみるところから始めてみてください。判断に必要な材料は、そこから一気に揃います。

